2020年、新型コロナウイルスの感染拡大は、英会話教室業界の前提を一気に変えました。
それまで多くの通学型スクールは、「教室に来てもらい、同じ空間で会話すること」をサービスの中心にしていました。しかし、休講や外出自粛によって教室へ来られなくなり、数週間から数か月のうちにオンライン対応を迫られます。
コロナ禍が変えたのは、レッスンを画面越しにしたことだけではありません。校舎の役割、予約制度、講師の働き方、受講者がスクールへ求める安心、事業者の固定費、そして「対面である意味」まで問い直されました。
本記事では、コロナ禍前・最中・現在の3段階から、英会話教室業界に起きた変化を整理します。長期的な業界史は英会話教室の歴史をご覧ください。
コロナ禍が残した主な変化
- 通学型スクールでもオンラインレッスンが標準的な選択肢になった
- 予約、教材、カウンセリング、決済のデジタル化が進んだ
- 校舎数や広さを見直し、固定費を抑える動きが強まった
- 講師が教室外からレッスンでき、採用地域が広がった
- 対面とオンラインを目的別に使い分けるハイブリッド型が定着した
コロナ禍前|通学型とオンライン型は別の市場だった
コロナ禍前からオンライン英会話は存在し、低価格・高頻度・自宅受講を強みに成長していました。一方、駅前などに校舎を持つ英会話教室は、対面での会話、講師やカウンセラーとの関係、教室の雰囲気を価値としていました。
両者は競合しながらも、比較的はっきり分かれていたのです。
- 通学型:対面、教室、担当者の支援、学習の場への切り替え
- オンライン専業:価格、頻度、時間帯、場所を選ばない利便性
通学型スクールがオンラインを提供していても、補助的な位置づけにとどまることが少なくありませんでした。受講者側にも「オンラインは対面より簡易なもの」という見方が残っていました。
2020年春|教室へ来られないという突然の危機
2020年4月7日に緊急事態宣言が出され、その後対象地域が全国へ広がりました。人が集まり、向かい合って会話する英会話教室は、感染対策上きわめて難しい状況に置かれます。
スクール側では、次の問題が同時に発生しました。
- 教室の休講・営業時間短縮
- 予約済みレッスンの振替や期限延長
- 月謝・前払い契約への対応
- 講師や受付スタッフの勤務調整
- 校舎賃料など固定費の継続
- 受講者への連絡と不安への対応
- オンライン環境の緊急整備
経済産業省の特定サービス産業動態統計では、外国語会話教室について、売上高、受講生数、新規入学生数、開設数、事業所数、従業者数、講師数が月次で集計されています。コロナ期の市場を見るうえで、「教室が開けない」「新しい受講者を迎えにくい」という影響を複数の指標から確認できる資料です。

オンライン化は「Zoomを入れるだけ」ではなかった
対面レッスンをオンラインへ移すには、ビデオ会議システムを導入するだけでは足りません。
講師は、画面越しに発言を引き出す方法、教材を共有する方法、音声が聞こえないときの対処を学ぶ必要があります。受付やカウンセラーも、ログイン案内、接続テスト、予約変更、教材送付、オンラインでの学習相談へ対応しなければなりませんでした。
受講者側でも、パソコンやスマートフォンの操作、カメラへの抵抗、自宅で英語を話す恥ずかしさなど、新しいハードルが生まれます。特にオンラインに慣れていない初心者やシニア層にとっては、レッスン以前の支援が重要でした。
しゅみすけ(大山俊輔)
僕らも、教室に来ていただくことを前提に長年仕組みを作っていました。コロナ禍では「オンラインの機能を足す」というより、予約、講師、サポート、会員さんへの説明まで、サービス全体を短期間で組み直す感覚でした。
講師の働き方はどう変わった?
コロナ禍前、通学型スクールの講師は担当校舎へ出勤することが基本でした。オンライン化によって、講師も自宅や別拠点からレッスンできるようになります。
これにより、教室から離れた地域に住む講師、育児や介護で通勤時間を抑えたい講師、帰国後の外国人講師とも関係を継続しやすくなりました。スクール側にとっては採用地域が広がる一方、次のような管理課題も生まれます。
- 通信、カメラ、マイク、背景などの品質管理
- 自宅から教える際の個人情報・教材管理
- 講師同士の情報共有と研修
- 対面とオンラインで異なる教授技術
- 勤務時間・契約・評価方法の見直し
校舎の価値と固定費が問い直された
通学型スクールは、駅前の便利な校舎や居心地のよい空間に投資します。しかし利用者が来られなくても、賃料や設備費は続きます。コロナ禍は、校舎を多く持つ事業モデルの固定費リスクを明確にしました。
そのため業界では、校舎の統合、面積の縮小、契約条件の見直し、オンラインへの比重移動が進みました。一方で、行動制限が緩和されると「人と直接話したい」「家では集中できない」「学習する場所へ出かけたい」という需要も戻ります。
校舎は不要になったのではなく、単にレッスンを受ける箱から、集中、交流、相談、安心を提供する場所へ役割を問い直されたのです。
受講者がスクールへ求めるものも変わった
コロナ禍を経験した学習者は、サービスに柔軟性を求めるようになりました。
- 体調や天候に応じてオンラインへ変更できる
- 休会・振替・有効期限の条件がわかりやすい
- 教室の衛生や換気に配慮されている
- オンラインでも相談やフィードバックを受けられる
- 対面とオンラインで学習記録がつながる
「教室かオンラインか」の二者択一より、生活に合わせて切り替えられることが安心につながります。
オンラインで失われやすかったもの
オンライン化には大きな利便性がある一方、画面越しでは再現しにくい価値も明らかになりました。
- 教室へ移動することで生まれる学習モードへの切り替え
- 表情、視線、姿勢、声量を含めた立体的なコミュニケーション
- 受付や講師との短い雑談
- 同じ場所にいることによる緊張感と没入感
- 接続トラブルを気にせず会話に集中できる環境
とくに英会話初心者は、言葉だけでなく相手の表情や場の空気から「伝わっている」と判断します。対面の安心感が話す勇気を支える人も少なくありません。
逆に、オンラインで初めて通えた人もいた
教室が近くにない地域の人、子育てや介護中の人、仕事の終了時刻が読めない人、移動に負担がある人にとって、オンラインは学習機会を広げました。
また、教室へ入ること自体に緊張する初心者でも、自宅なら始めやすい場合があります。通学時間がなくなることで、短いレッスンを高頻度で受ける設計も可能になりました。
オンラインは対面の代用品ではなく、別の人へ英会話を届ける独立した手段として定着したのです。
コロナ禍後の現在|ハイブリッドが標準になった
新型コロナウイルス感染症は、2023年5月に感染症法上の位置づけが5類へ移行しました。社会活動が戻ったあとも、コロナ禍で整備されたオンライン環境は消えていません。
現在の英会話教室では、次のようなハイブリッド化が進んでいます。
- 普段は教室、忙しい週だけオンライン
- 会話実践は対面、復習やカウンセリングはオンライン
- 校舎にいる受講者と遠隔講師を接続
- AIや動画教材で自主練習し、人とのレッスンで実践
- 入会説明・契約・決済をオンラインで完結
対面とオンラインの比較は、オンライン英会話と英会話教室の違いで詳しく解説しています。
コロナ禍で英会話教室は強くなったのか?
すべての事業者が同じように強くなったわけではありません。オンライン対応にはシステム、研修、サポートの投資が必要です。教室とオンラインを両方維持すれば、運営が複雑になり、必ずしもコストが下がるとは限りません。
一方で、ひとつの校舎・ひとつの提供方法に依存しない体制を作ったスクールは、災害、悪天候、交通障害、講師の移動制約にも対応しやすくなりました。コロナ禍は、業界にとって事業継続計画を現実のものとして考える契機になったといえます。
しゅみすけ(大山俊輔)
コロナ禍を経て、対面とオンラインのどちらが上か、という議論はかなり意味が薄くなりました。大事なのは、学習者が止まらずに続けられること。その人にとって今日はどちらがよいかを選べる設計が、これからのスクールの強さやと思います。
現在の英会話教室を選ぶときの確認点
- オンライン変更:対面予約をオンラインへ切り替えられるか
- 学習記録:受講形式や講師が変わっても課題が共有されるか
- サポート:接続トラブルや操作を相談できるか
- 料金:対面・オンラインで単価や有効期限が変わるか
- 講師品質:オンライン用の研修や環境基準があるか
- 教室の価値:通うことで得られる集中・安心・交流があるか
- 休会・振替:予期せぬ事情へのルールが明確か
業界の事業者構成から違いを理解したい方は、英会話教室業界のプレイヤー構成もご覧ください。
まとめ|コロナ禍は「教室かオンラインか」を「どう組み合わせるか」へ変えた
コロナ禍は、英会話教室に大きな売上・運営・雇用上の負担を与えました。同時に、長年変わりにくかった予約、教材、講師配置、カウンセリング、校舎の役割を短期間で見直す契機にもなりました。
現在は、対面とオンラインを目的や生活に合わせて組み合わせる時代です。便利さだけでなく、安心して話せること、学習記録がつながること、無理なく続けられることを基準に、自分に合うスクールを選びましょう。
体験レッスンを検討している方へ
申込み前の確認事項は初回予約前に知っておきたいこと、料金やレッスンの仕組みはプラン・料金案内でご確認いただけます。
オンライン英会話の流れも知りたい方へ: オンライン英会話業界はいつからある?誕生と成長の歴史では、Skype、フィリピン人講師モデル、スマホ、コロナ禍、AIまでを年表で整理しています。


